先生と生徒
「とんかちとかなづちの違いって知ってる?」
一か月間コツコツ頑張っている木刀造りの作業をしている時、この質問を投げかけられた。私はびっくりした。とんかちもかなづちも釘等を打つ時に使うものという認識だったからだ。その違いを意識して使ったことなどなかったし、気にしたこともなかった。
「知らないから教えて」というとご本人は嬉しそうにちょっと誇らしげに教えてくれた。子供から大人が教わっている。一見すると恥ずかしいことのように思われる。しかし、子供が知っていて大人が知らないこともある。
もちろん大人が知っていて子供が知らないこともある。「木炭はなぜ燃えるの?」今度はこちらが教える側になった。とんかちとかなづちの違いを教えてくれたお礼というわけではないがなるべくわかるように教えた。先生と生徒の関係は簡単に入れ替わる。先生と生徒という関係に年齢など関係ない。
そんな話をしながら作業をしていると、「できた」と木刀完成の宣言。苦労して造った甲斐あってか素晴らしい作品だった。「もう造りたくない」ご本人はそう言っていたが、その顔は達成感で満ちていた。最初からなにかを造るという経験はなかなかできるものではない。いつか彼があの時ころころで木刀造りを体験してよかったと思ってくれたなら嬉しい。
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